中国共産党によるウイグル人への凄惨な迫害の現状
中国に属するイスラム教圏の新疆ウイグル自治区。この地では今、ウイグル人家庭に対する漢族公務員や民間監視委員による“突然の訪問”が頻繁に行われている。中国メディアはこれを笑顔の多民族交流と報道しているが、その実は全く異なっているという。
福島香織著「ウイグル人に何が起きているのか」(PHP研究所 880円+税)は、ウイグル人への迫害についてつづられたルポ。
現地に潜入取材を試みた著書が、その現状を明らかにしている。
新疆ウイグル地区では「脱過激化条例」なるものが施行されている。イスラム教文化の世俗化や中国化こそが脱過激化の方法として掲げられ、イスラムで忌避すべき豚肉と酒を、無理やり食べさせたり、飲ませたりしている。冒頭の“突然の訪問”はそのためのもので、ウイグル人はこれを笑顔で受け入れることを強要される。万が一、嫌な顔でも見せようものなら、待っているのは「再教育施設」への連行だ。
ラーゲリと呼ばれるその場所に収容されたのち、奇跡の生還を果たした人物の証言は、あまりにも生々しい。ある日突然、テロリストの疑いをかけられた彼は問答無用で連行され、両手を吊るされて汚水タンクに漬けられながら尋問されたという。
尋問のあとは、再教育という名の洗脳だ。鎖につながれ「党に感謝、国家に感謝、習近平主席に感謝」と大声で唱えさせられ、こうした生活が8カ月にも及んだ。虐待死も珍しくないこの施設には、15歳の少年も80歳の老人もいたという。
本書には8ページにもわたり、著名ウイグル人の拘束者リストも掲載されている。21世紀の現代、これほどの迫害が、なぜ国際社会で容認されているのか。問題提起の書でもある。