「世界の民族衣装図鑑」文化学園服飾博物館編著
日本の民族衣装といえば着物だが、今では街中で見かけることも少なく、冠婚葬祭など、特別な日の装いになってしまった。しかし、着物は、寛大な袖やV字開きの襟など高温多湿の夏に適応し、羽織などを重ね着することによって、寒暖の差にも対処できる、日本人には万能の衣類なのだ。
このように民族衣装は、その土地の気候や風土、暮らし方など人々の生活に適応する理にかなった形態がつくられ、社会状況や時代によって変化して今に至っている。
本書は、そんな世界各国の民族衣装を一堂に並べた写真図鑑。
1万3000以上の島々からなるインドネシアは多様な民族文化を形成。ジャワ島ではバティックと呼ばれるろうけつ染めを用い、男性の正装は腰巻き衣「カイン・パンジャン」に上着「クメジャ」、そして頭巾「プランコン」を組み合わせる。かつて上半身は裸体が正装だったが、西欧風の上着が加わったそうだ。同じインドネシアでもフローレス島西部に暮らすマンガライ人は男女同種の筒状の木綿地のドレスをまとい、スンバ島の男性衣装は赤を多用した腰巻き衣と肩掛け用2枚1組の「ヒンギ・コンブ」となる。
一方、ギリシアの男性用衣装のボトム「フスタネラ」は、かわいらしいミニスカートのようだが、実は脚半と組み合わせ、険しい山道を歩くのに適しているのだとか。
ウガンダ南部ブガンダ王国・バガンダ族の巻き衣は「バーククロス(樹皮布)」と呼ばれる樹皮の内皮を叩きのばし、フェルトのように絡み合わせて布状にしたもの。その鮮やかな赤茶色は染料ではなく、日光に当てることでタンニンが反応して発色したものだという。
世界69カ国の民族衣装を網羅。眺めているだけで楽しく、海外旅行気分を味わえる。
(ラトルズ 2980円+税)