「猿の見る夢」桐野夏生著

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 元銀行員の薄井が勤務する衣料製造小売会社は時流に乗って急成長。59歳で財務担当取締役の薄井は、せめて常務まで出世したい。そのために会長と娘婿の社長の派閥争いには巻き込まれたくない。そんな薄井の唯一の楽しみは、愛人との週2回の逢瀬だ。

 ある日、愛人とのデートに出かけようとしたところ、会長の織場に呼び出された薄井は、社長の福原のセクハラがネットで問題になっていると耳打ちされる。織場は騒ぎを利用して失いかけた会社の実権を取り戻したいらしい。一方、愛人とのデートは喧嘩別れになってしまい、いつもより早く帰宅すると自宅には見知らぬ女性がいた。妻の史代が招いた占い師の長峰だという。

 思い描いていた定年後の計画が次々と破綻していく中年男を描く長編。

(講談社 1000円+税)

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