「新装版昭和少年SF大図鑑」堀江あき子編
自動運転や空飛ぶ自動車など、新しい時代の到来を予感させる新技術の実用化が目前に迫っている。しかし、昭和20~40年代に少年時代を過ごしたおじさんたちは、これらの新技術やアイテムに既視感を抱いているのではなかろうか。
なぜなら、当時、夢中になって読んだ少年雑誌の21世紀を予見した未来予想図や空想科学特集に描かれていたものばかりだからだ。
本書は、昭和20~40年代に少年雑誌の表紙や口絵、挿絵に描かれたそうした未来予想図などを集め解説する図鑑。
地震大国の日本では昭和38年まで建物の高さ制限が31メートルまでと定められ、高層ビルなど夢のまた夢。そんな時代に描かれたのは、超高層ビルが立ち並び、ビルの間を縦横無尽に交通網が張り巡らされた未来都市だ。また急激な人口増加に対応するため、ドームで覆われた海底や南極の都市なども考えられていた。
驚くべきは、自動操縦車とともに盛んに描かれる「エアカー」と呼ばれる空飛ぶ自動車の想像図が、現在のドローン技術を応用したものと基本コンセプトが全く同じで、デザインも似ているのだ。
他にも、チューブの中を空気で浮かせた車体が超高速で走る列車や、オスプレイを彷彿とさせる滑走路を必要としない航空機などもある。
未来予測図で一番多いのは宇宙開発で、遠足に「月巡り」に出かける様子を描いた絵などもあるが、一方で使用済み人工衛星を始末する宇宙船といった、いままさに現実になりそうな問題も予測されている。
科学技術者たちの夢と画家たちの想像力によって描かれた未来の姿。同時代を生きた世代には懐かしく、若者たちには巨匠・小松崎茂らのレトロなSF挿絵が新鮮に感じられるのではなかろうか。
(河出書房新社 1700円+税)