「クオリティランド」マルク=ウヴェ・クリング著 森内薫訳

公開日: 更新日:

 物語の舞台は、世紀の経済危機を契機に生まれた新国家「クオリティランド」。危機から脱出するため企業コンサルタントによって国家名もかえた新国家では、国民はあらゆる情報によって1~100のレベルにランク付けされている。

 人々は、仕事から人間関係までがアルゴリズムで最適化されており、車は自動運転、買い物は注文しなくても本人が望んでいると判断されたものが自動的にドローンで届くようになっている。

 主人公のペーター・ジョブレスのレベルは10。まともに扱われるギリギリのラインにいる状態だ。ところが、あることを契機に役立たずといわれる1桁レベルに転落してしまい、さまざまな不都合に直面することに。

 あるとき、欲しくもない商品が届いたことに腹を立てて、返品しようとするのだが、そこには巨大なシステムの壁が立ちはだかっていた……。

 2017年にドイツで出版されて大ヒットした「QUALITYLAND」が原作。AIで情報が集約&管理された世界で起こるさまざまな出来事を風刺的に描く。SFのはずが、事象の多くがすでに現実になりつつあることに背筋が凍る。

(河出書房新社 2900円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動