「雪の結晶 小さな神秘の世界」ケン・リブレクト著 矢野真千子訳

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 雪の降る日、袖口に舞い降りた雪の結晶の美しさとはかなさに心を奪われたことがある人も多いはず。あの雪の結晶、実は同じように見えて、どれひとつとして同じものはないという。それも、毛虫のようにもじゃもじゃしたものから、シャンデリアや糸巻きのように立体的なものまで、実に多彩。

 本書は、そんな雪の結晶を楽しむ「スノーウオッチング」の世界を案内してくれる入門書。

 そもそも雪は氷でできてはいるが、雨粒が凍ってできるわけではないという。雪は液体である水からできるのではなく、気体である水蒸気が液体の段階を経ずに直接固体になってできる「昇華凝結」という現象によって作り出される。この昇華凝結するときの条件によって、さまざまな形が生まれるのだそうだ。

 雪の結晶がバラエティーに富むのは、できかけの結晶に空気中の水分子が付着しながら育つからだ。そして、結晶の形には温度や湿度が関係するが、なぜこのように成長するかは科学の謎のひとつだという。そんな雪の結晶ができる仕組みやその特徴を詳しく解説。

 その合間に、これまで著者が撮影してきた雪の結晶写真が並ぶ。

 ヨーロッパのどこかの王家の紋章のように複雑で豪華なものから、幾何学的でシンプルながらも有名デザイナーの作と見まがうばかりのシャープな造形のもの、お馴染みのシダ状の星形、さらに雲を構成する細かい水滴「雲粒」で装飾されたもの、気泡が入った角柱タイプ、そしてコイン大の巨大で複雑な結晶まで。写真を見ているだけで、自然が生み出したその奇跡のような美しさに時間が経つのも忘れてしまう。

 撮影のための機材のセットの仕方や技術まで惜しみなく披露。寒いのは苦手な人も、雪の日が待ち遠しくなるに違いない。

(河出書房新社 1600円+税)

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