「アフターマン」ドゥーガル・ディクソン著 G・Masukawa訳
今から5000万年後の地球。人類は滅亡して久しく、人類によって破壊された自然が回復したら、動物たちはどのように進化し、どのように暮らしているのか。
本書は、緻密な考証から、そんな動物たちを紹介する空想図鑑。
進化を推測する前提は、地球環境、気候、植生の分布などが現在とよく似ていること。そして絶滅が危惧されていた動物や、人間の世話が必要な家畜類は絶滅したと仮定。そうすると、カラスなどの鳥類やネズミやウサギなど、人間が害獣とみなし、しかし、どうしても根絶できなかった動物たちが、未来の野生動物の種となるという。
生物が暮らしやすい温帯域は、人類時代に大きなダメージを受け、多くの生物が絶滅。わずかに生き残ったものが、温帯森林地方の生物に進化した。中でも、かつて繁栄したシカ類の生態的地位を引き継いで成功したのが、ウサギが進化した「ラバック」の仲間だ。
初期のラバック類は先祖のように跳躍していたが、その後、入り組んだ森林を移動できるようシカ類そっくりの体形に進化。脚の構造も変化して、走り回るようになっている。
その他、針葉樹林地帯に生息する頭の角が板状に変化して顔面が覆われた偶蹄類「ホーンヘッド」や、ソーセージ状のピンクの体にシャベルのような四肢を持ち砂漠地帯で暮らす「デザート・シャーク」、太平洋の島で独自の進化を遂げた地上コウモリ「ナイト・ストーカー」(表紙)など。生息地域別に出現するかもしれないさまざまな動物たちの生態や進化の過程を、精緻なカラーイラストを添えて解説する。
誰も見ることができない「もしも」の世界をリアルに描いた名著の児童書版だが、大人でも十分楽しめる内容の濃さだ。
(学研プラス 1300円+税)