「日本の文様 解剖図鑑」筧菜奈子著
着物の柄や建物の装飾など、私たちの暮らしは、さまざまな「模様」にあふれている。そんな数ある模様の中で、季節や吉兆などの特別な意味を持つのが「文様」である。世界中で風土に合わせた文様が作られてきたが、中でも日本の文様は多種多様だという。
日本の美の一端を担うそんな文様の意味や歴史を紹介する図鑑。
日本の文様の歴史は、縄文時代にまで遡れるが、平安時代には、伝来した異国のモチーフを参考に、独自の文様が作られるようになったという。
鎌倉時代にはそれぞれの家で独自の文様をつけることが流行し、戦では敵味方を区別するためにさらに記号化された文様が生まれた。これが家紋の先駆けだ。以後、時代時代でさまざま文様が生まれ、戦後は廃れたものの、いま再び文様に注目が集まっているという。
まずは日本人に親しまれてきた77種の文様を解説。
松竹梅は、現代人にもお馴染みのモチーフだが、松だけでも、一枝を笠に見立てた「笠松」や、庭の苔を霜から守るために松葉を敷き詰めた様子を文様にした「敷き松葉」など各種ある。
また奈良時代に伝来した菊が文様として使われるようになったのは平安時代。梅竹蘭とともに「四君子」と呼ばれ、徳と学識、礼儀を備えた高潔な人物を象徴する花となり、後鳥羽天皇も愛用したという。こうしたエピソードとともに、それぞれの文様が使われた皿や刀のつば、文箱、鞍などの写真も添えて紹介。
後半は、リニューアルオープンしたホテル「The Okura Tokyo」や京都御所など新旧のスポットを巡り、各所に使われている文様をフィールドワーク。また和菓子に使われる文様なども取り上げながら、日本の美の奥深い世界を案内してくれる。
(エクスナレッジ 1600円+税)