動物たちの生きざまから人生哲学を学ぶ

公開日: 更新日:

 サイ・モンゴメリー著「動物たちが教えてくれた『良い生き物』になる方法」(古草秀子訳 河出書房新社 1750円+税)では、動物を愛するナチュラリストであり、ベストセラーを持つ作家が、叙情的な文章で動物たちの生態を紹介するとともに、彼らから得た“学び”をつづっている。

 ある年のクリスマス、著者は自宅の鶏小屋へ卵を集めに向かった。すると、一羽の鶏が小屋の隅に首を突っ込んで横たわっていた。脚を持って引っ張り出すと、一緒に出てきたのは純白のオコジョ。クルミほどの小さな頭に漆黒の目、そして口周りは鶏の深紅の血で染まっていた。

 大事に育てた鶏が殺されたのだから、オコジョに反撃してもよさそうなものだが、怒りはまったく感じなかったと著者は言う。目の前にいるのは体重わずか250グラムほどのかわいい生き物だが、世界最小の肉食動物の一種であり、ライオンのような獰猛さが凝縮されていた。自分の数倍もある獲物を一撃で仕留めることができ、1日の食事量は体重の3分の1にも及ぶ。そのオコジョから「私の獲物を返せ」とばかりの恐れを知らぬ視線を向けられ、かえって畏敬の念を抱いたという。

 同時に著者は、自身の母を思い出した。貧しく、田舎で、女性という三拍子揃った逆境で育ちながら、大学で学び、卒業生総代になり、FBIに就職した母。その生きざまが、生きるためのいちずな獰猛さを備えた純白のオコジョと重なったのだ。

 リーダーとしてのあり方を示してくれたエミュー、触れ合いと友情の素晴らしさを教えてくれた巨大ミズダコなど、動物を見る目線を変えてくれる本書。“動物から学ぶ”という姿勢を持つことで、人間らしさとは何かを考え直すきっかけにもなりそうだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭