“不良在庫”の犬や猫がたどる残酷な運命
犬や猫の「殺処分ゼロ」を目指す自治体などの取り組みが進む一方で、巨大化するペットビジネスによって“増産”され、“不良在庫”として闇に葬られる命の存在は忘れられがちだ。
太田匡彦著「『奴隷』になった犬、そして猫」(朝日新聞出版 1500円+税)では、流通過程で劣悪な環境下に置かれている犬や猫たちの現状をルポ。
動物愛護先進国の事例も紹介しながら、日本の問題点を浮き彫りにしている。
ペット業界には「引き取り屋」と呼ばれるビジネスがあるという。大量生産と大量消費というペットショップの構造の陰には、売れ残った不良在庫の処分が生じる。動物愛護法35条の改正により、自治体は繁殖業者やペットショップからの犬猫の引き取りを拒否できる。そこで暗躍するのが引き取り屋だ。
本書が訪ねた引き取り屋によると、小型犬で1万円、中型犬2万円、猫は5000~1万円程度の引き取り料が入ってくるという。引き取られた売れ残りの犬猫たちは殺されるわけではなく、引き取り屋の元で死ぬまで飼われる。しかし、待っているのは生き地獄だ。
敷地内には常に150匹以上がひしめき合って、固まった糞尿と毛玉に覆われ、感染症や骨格異常を起こしているケースもあったという。
アメリカなどでは、犬猫を飼育するケージに必要な広さを、具体的な数値で規定している。しかし、日本にはこの数値規制がなく、虐待的な環境や繁殖業者での不適切飼育が起こりやすくなってしまう。
今年改正された動物愛護法の課題や、自らの利益を追求し、規制強化に強固に反対する一部のペット関連業界団体についても取り上げる本書。ペット業界の裏側から目を背けてはいけない。