「最悪の将軍」朝井まかて著
延宝8(1680)年5月、館林藩主・綱吉は江戸城での詮議に呼び出される。
議題は病に伏す将軍・家綱の世継ぎ問題だった。大老・酒井の意向で見舞いもままならぬ綱吉には、兄である家綱の病状も分からない。自らは天下を望まぬ綱吉は、亡くなった三兄・綱重の嫡男・綱豊こそが将軍後嗣にふさわしいと考えていた。
しかし、酒井は、綱豊に後継ぎが生まれるまでの中継ぎ将軍として、朝廷から親王を迎えると言い出す。
徳川家の権威が落ち、再び戦国の世へ逆戻りすることを恐れた綱吉は、兄の真意を知りたい。その時、新参老中の堀田が家綱直筆の証文を掲げ、綱吉こそが上意であると宣言する。
犬公方として悪名高い5代将軍・綱吉の知られざる生涯を描く歴史小説。
(集英社 700円+税)