「香港雨傘運動と市民的不服従」周保松、倉田徹、石井知章著
いま世界中のテレビニュース(ただし中国以外)で大々的な注目を集めるのが香港問題。直接のきっかけは「逃亡犯条例」への反対だが、2014年の雨傘運動からの因縁は明白。あれこそ若者だけの学生運動の域を超え、知識人、ホワイトカラー、工場労働者、定年退職者までふくむ「香港史上最大規模の全民衆による民主化運動」だった。
もとをたどると、香港返還にともなう「一国二制度」を定めた基本法の前年(89年)に中国で大規模な民主化運動が起こり、天安門事件が勃発している。つまり、すべてはつながっているのだ。
本書は香港中文大学のリベラルな学者を囲んで18年、東京で行われたシンポジウムの記録。視野を台湾にまで広げ、戦前から文化大革命を経て、いまにつながる民主化・近代化問題を論じた中村元哉著「中国、香港、台湾におけるリベラリズムの系譜」(有志舎 2600円)も役立つ。
(社会評論社 1800円+税)