「習近平の中国経済」石原享一著
世界経済が、いまや中国抜きに語れないのは事実。しかし、その実態はどうか。GDP総額で中国がいずれ米国を抜くのは明白。その成長を支えるのは①スマホ決済②シェアサイクル③ネット通販④高速鉄道だという。たしかにインバウンド旅行者を見てもキャッシュレス決済の霊験はあらたかだ。
その一方、成長のツケもあらわになった。アナリストとして中国経済を40年間見てきた著者でさえ、近年の中国は気疲れし、マナーの悪さや社会的信用の欠如に驚くという。とはいえ高度成長期の日本人も似たようなものだった。
むしろ本当の問題は政治家や官僚、経営者らの支配層だ。改革開放時代、国有企業は民営化を迫られたが、いまは「国進民退」といって新国有企業優遇。富国のためには食品の安全など企業文化の確立が求められるが、果たして政財癒着のもとで実現できるかどうかは大きな課題だろう。
新書サイズながら多方面にわたる視点とデータが豊富に示されている。(筑摩書房 780円+税)