「したたかな植物たち 秋冬篇」多田多恵子著

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 中国伝来の彼岸花は、有性生殖が出来ない系統のため球根が分かれて繁殖。当然、移動能力がないので、各地に見られる現在の状況は、かつて人が積極的に移植した結果だという。

 実は彼岸花は人々の暮らしに寄り添う大切な有用植物で、最大の用途は飢饉に備えた救荒植物だったそうだ。ただし毒がありそのままでは食べられず、精製しなければならなかった。また彼岸花がよくあぜや土手に植えられるのは、増水などで球根が浮くと根が縮んで引っ張り込む「牽引根」で、球根があぜや土手の土留めの役割を果たしたからだという。

 他にも、踏まれることで生活圏を広げるオオバコや、性転換するカエデなど、13種の植物のサバイバル術に感嘆。

 植物の驚異の生存戦略を紹介する科学エッセー。

 (筑摩書房 950円+税)

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