「ワールド・ロードトリップ」ゲシュタルテン編
暮らすように旅をする人々とその相棒となる愛車の改造例を紹介するビジュアルブック。
「料理を学び、高級レストランで働くことを目標にしてきた」フランス人シェフのセシールとシモンは、そんなシェフとしての未来に疑問を抱き、他の国々を訪ね、美食や文化をもっと知ろうと旅に出た。1997年製フォルクスワーゲンT4を相棒に選び、オーダーメードのソファベッドや料理試作に耐えるキッチンなどを備え付ける(写真①)。6カ月をかけてスペインなど3カ国を回り多くのことを学び、ヘルシーなヌーベル(新しい)料理を作り上げる術を身につけたと語る。
アメリカ人のタトゥーアーティストのカイとジュリーは、住んでいたベルリンで小さな家を建てようと考えていたが方針転換。暮らし方をダウンサイズし、必要最低限度のもので生活しようと考える。いつも1カ所にいたくないので、住んで仕事もできるモーターホームを新たな自宅に選ぶ。そんなある朝、道端で1993年製のGMCディーゼル・バンデューラ・バスと出あい即決。アメリカ映画などでおなじみの、あの黄色いスクールバスだ。
800時間をかけて自ら改造したバスには、もうすぐ薪ストーブも設置される予定で、まるで民泊施設のような趣だ。
ソープやスキンケア製品を製造・販売するカナダ人のラファエリとマークは、トレーラーを工房にして行く先々で見つけた薬草で製品を手作りし、各地のフェスやマーケットなどで売る。工房を牽引し、住居となるのはかつてアメリカ大陸横断に使われていた1967年製のモーター・コーチ・インダストリーズ社のバスMC―5Aチャレンジャーだ。この車の走行距離はなんと160万キロ、地球と月を2往復以上している距離だ。
選ばれるのはこうした大きな車だけではない。エンジンわずか0・9リットルのダイハツ・ハイジェットを改造してベッド・テーブル・衣装収納箱を設置し、ヨーロッパ5カ国を旅したカップルもいる(写真②)。またモーターホームとは真逆のスポーツカー、1985年製ポルシェ944にルーフテントを設置してイギリスからヨーロッパ、そしてアフリカ大陸を南北縦断して南アフリカまで走り抜けた猛者もいる(保険で友人が三菱のパジェロで伴走したそうだが)。
かと思えば700ポンドで手に入れた軍用のランドローバー・シリーズⅢで8年、その後はヤマハのバイク・テネレXTZ660で12年かけて100カ国以上40万キロを走破したドイツ系アメリカ人クリストファーなど、壮大な旅の途中の人もいる。
そんな28組の人生とそれに寄り添う車に加え、さまざまなタイプのモーターホーム改造例、さらに随所にアウトドアクッキングのレシピも添えられ、読者を旅に誘い出す。
(グラフィック社 2900円+税)