「地形の思想史」原武史著
村上春樹の「1Q84」には、奥多摩から山梨県にかけての地域が、1960年代から70年代の新左翼の活動の拠点として描かれている。八王子市とあきる野市の境にある小峰峠を抜けると五日市町だが、五日市町は明治初期には多摩地区の自由民権運動の中心地だった。その背景には、五日市町が外国交易の玄関口、横浜と街道でつながっているという地理的条件がある。この地で教員、千葉卓三郎が1881年に「日本帝国憲法(五日市憲法)」を起草したという。その草案に書かれた基本的人権の尊重や言論の自由などは、1946年公布の「日本国憲法」に受け継がれた。
地形という視点から日本の「思想」を考えるユニークな一冊。
(KADOKAWA 1800円+税)