「ドミノin上海」恩田陸著
映画監督のフィリップ・クレイヴンが、小さな十字架の墓標の前で地面に突っ伏して泣いている。彼のペットだったイグアナのダリオが、撮影クルーの宿の青龍飯店で、調理されてしまったのだ。
料理長の王湯元は、厨房の床をうろうろしていた見たことのない動物を、新しい「食材」と思い込んだ。ダリオは夕食の宴に、銀の皿にのせられてフィリップに供されたのだった。
一方、動物園では、ベテランの飼育係の魏英徳が、パンダの厳厳を見つめていた。――またやる気じゃないだろうな。厳厳は、過去に2回、まんまと檻から逃げ出したことがあったのだ。
25人と3匹がドミノ倒しのように事件を繰り広げる、息もつかせぬエンターテインメント。
(KADOKAWA 1700円+税)