「死ねない時代の哲学」村上陽一郎著
世界有数の長寿社会を実現した日本はいま、「価値観の転換というべきもの」に直面していると著者は指摘する。それは死についてだ。5年後には高齢者率が約30%という超超高齢社会に突入し、「なかなか死ねない」という意識が共有され、ボディーブローのように社会全体に効いてくるのではないかという。そんな「百寿社会」を生きる私たちが、自らの死を考えるための手引書。
自宅死から病院死に変わったことによる死の社会相や、生活習慣病がもたらした医療と患者との関係など、病気と死をめぐる世の中の変化を解説。一方で、日本人の死生観や尊厳死・安楽死、終末医療など、現在の死を取り巻く環境について詳述しながら、自らの死について考える道標を示す。
(文藝春秋 850円+税)