「365日日本一周絶景の旅―新装版―」TABIPPO編
絶景といわれる場所は日本だけでもそれこそ星の数ほどあるが、四季折々、それぞれの絶景には最高の見ごろ、訪ねごろがある。
本書は、一年365日それぞれの日ごとに、その日一番お薦めの絶景365カ所を集めた絶景カレンダーともいうべき写真集。
新しい年の始まり、1月1日に拝みたい絶景となれば、この絶景をおいて他には思い浮かばないのではなかろうか。「富士山」だ。日本の象徴として不動の位置を確立した富士山の夜明け前の荘厳な姿から一年が始まる。
以降、1月2日は初詣にもぴったりな京都の伏見稲荷大社のどこまでも続く「朱色の鳥居」。そして3日は100万ドルともいわれる兵庫の「摩耶山からの夜景」と続く。
ここが日本? それも東京? と思わず目を見張ってしまう日本で唯一の砂漠「伊豆大島の裏砂漠」(2月26日)や、沖に浮かんだ島のぽっかりとあいた洞穴に夕日が入る和歌山・白浜きってのビューポイント「円月島」(6月20日)。透明度の高いコバルトブルーの海と真っ白な砂州のコントラストがハワイを連想させる福井・敦賀半島沖に浮かぶ「水島」(9月17日)など。大自然がつくり出した息をのむような絶景があるかと思えば、人間の手がつくり出した絶景もある。
ダムの水量の変化によって夏は水底に沈んでしまう北海道の「タウシュベツ川橋梁」(5月13日)や、1889年に開坑、1964年に閉山した福岡の国営・志免炭鉱のシンボルともいえる「志免鉱業所竪坑櫓」(11月9日=写真②)、三重の世界最大級の木製コースター「ホワイトサイクロン」(9月25日)の夜景などだ。
他にも、1400年も受け継がれてきた日本最古の火祭りである和歌山・神倉神社の「お燈まつり」(2月6日)や、毎年、国内外から100機ほどの熱気球が集まる競技大会「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」(10月31日)、川面が幻想的な光景の徳島「吉野川のシラスウナギ漁」(1月18日)など、伝統行事やイベントによって、1年に1度、その日だけしか出現しない絶景もある。
旅先で、あるいはテレビなどで見たことがあるお馴染みの名所もあるが、ページを繰るたびに次々と目に飛び込んでくる奇跡のような風景に、日本に住んでいながらまだまだ知らない場所、知らないことがあることに新鮮な驚きを感じるだろう。
ちなみに本日(6月18日発行)で紹介されるのは、広島の「帝釈峡」(写真③)。全長18キロもある長い渓谷で、世界3大天然橋の一つ「雄橋」や、魚が上れないほどの急流「断魚渓」がある上流の「上帝釈」、人造湖がある「神龍湖エリア」、そして城跡などの景勝地がある「下帝釈」の3つのエリアに分かれている……と各絶景には、それぞれにまつわる歴史や文化の解説、その絶景が見られるベストタイム、小さな地図も添えられているのでガイドブック的要素も網羅。
お出かけの参考にするのはもちろん、見ているだけで旅した気分になれるお薦め本だ。
(いろは出版 3400円+税)