「医師が認知症予防のためにやっていること。」遠藤英俊著
認知症研究35年の専門医である著者は、認知症予防は40代から始める必要があり、さらには子供時代の過ごし方も認知症リスクに関わってくると説いている。
イギリスの医学雑誌「ランセット」では、「自分次第で改善できる認知症の9つのリスク要因」のひとつに「低学歴」を挙げている。そして、しっかりと学習して受験勉強に取り組むような期間が長いほど、認知症予防につながる可能性が高いという。それは、「コグニティブ・リザーブ」という脳の予備能力が発達するためだ。
脳の中で認知症の病変が現れ、その周辺の脳機能が低下したとする。しかし、学習機会が多かった人ほど予備能力があり、あるネットワークが使えなくなってもバックアップ回路を経由して以前と同じことができ、認知症の症状が軽くて済む。我が子に少しでもよい学歴を与えることは、彼らの認知症予防に対する投資にもつながるし、年齢を重ねても学習の機会はつくるべきだと著者は言う。
認知症はまだまだ他人事の40代ではどうか。前出の9つのリスク要因と照らし合わせてみると、この年代では「高血圧」や「肥満」の対策が不可欠であることが分かる。生活習慣病の予防は、20~30年後に認知症を発症させるアミロイドβの脳への蓄積を阻止することに役立つためだ。
本書では、著者が日々行っている予防法も紹介している。それは実に簡単なものばかりで、アミロイドβの蓄積を阻むクルクミンが豊富なカレーを週2、3回食べる、週3回30分の早歩き、料理教室に通うといった具合だ。認知症にならずに天寿をまっとうするための対策は、早ければ早いほど良いということを肝に銘じておきたい。
(日経BP 1400円+税)