「自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋」池田清彦著/宝島社新書
いつまで日本人は自粛を続け、そしてクソ暑い中でも皆マスクをつけているんだよ、どう考えても重症者数と死者は第1波の時よりも減っているんだから、「コロナはたいしたことないウイルス」認定してもいいんじゃねぇの? と多くの人が考えているであろう中、誰もが「一抜けた!」とばかりに小売店や電車の中でマスクをはずせない状態が続いている。
一抜けしてしまうと、「誰かにうつしたらどうするんだ!」や「エチケットです」「ドレスコードと一緒です」といった「正論」を「マスク警察」から言われる。さらには「それで誰かが死んだらあなたは責任を取れるのか」と来るのである。
本書はこうした「リスクゼロ症候群」に罹ったバカな日本人の行動様式や思考を徹底的に分析している。タイトルに「バカ」とついていたら大抵の本は私は気に入るのだが、本書も大いに気に入った。自粛期間中の「パチンコ叩き」や「自粛警察」について言及したうえで、こう続ける。
〈実は日本人がいちばん気に入らないのは、自分が我慢しているのに、楽しそうにしていたり、上手くやっていたりするやつなんだよ。自分はコロナで仕事が減ったりクビになったりしているのに、隣のやつが儲けたりするとすごく腹が立つ〉
そうなのだ。9月19日から22日までのシルバーウイークの時、行楽地が大混雑になっているテレビの映像を見て「けしからん! ワシは頑張って世間さまのために自粛を続け、娯楽を耐えているのにこのバカどもは遊びまくっておるとはなにごとだ!」と憤慨していたような人のことだ。多分けっこうな数がいたと思う。
そして、お定まりのように、「専門家」なる人がテレビで「10日~2週間後の数字に注目です」とやる。結局、今回は大問題は起きていなかったけど。
あと、本書では「喫煙者ファシズム」についても言及。著者はたばこを吸わないが、現在喫煙者が追いやられている状況は「やりすぎだよ」としたうえで、こう述べる。
〈しかし、すべての人がタバコを吸わなくなるとどうなるのか。世の中には多くの禁煙団体や禁煙NPO法人があるけれど、喫煙者がいなくなっていちばん困るのはこういう団体だ(中略)禁煙団体がいちばん感謝すべきは喫煙者だということがわかっていない〉
日々「何かおかしいんだよな……」と社会に対して疑問を抱く人にとっては「自分と同じ考えの人がいた!」と留飲が下がる本である。
★★★(選者・中川淳一郎)