「医者が教える 疲れない人の脳」有田秀穂著
十分な休息を取っているのに疲れが取れない。しかし、病院を受診しても体に明確な異常は認められない。そんな悩みがある人は、疲労の原因が体にではなく、脳にある可能性が高いと、脳生理学者の著者は言う。
脳の疲労は、大脳を酷使し続けることで発生するという。大脳は人の認知機能を担う器官だが、パソコンやスマホなどのデジタル機器を長時間使い続けると、過度の興奮状態に陥り疲労がたまる。やがて頭がボーッとしてきて、認知機能が低下してしまうのだ。
このような状態になれば、眠ってひと休みしようとするだろう。しかし、認知機能を担う大脳は覚醒中枢と結びついているため、興奮状態になっていると覚醒レベルも上がって脳全体が休息モードに切り替わらなくなってしまう。すると、眠ろうとしても眠れない、あるいは眠ったつもりでも脳が休めていない状態が続き、疲れも取れず、やる気も起こらず、体も活発に動かなくなる。やがて、頭痛や動悸、めまいなどの不定愁訴が続くようになり、本格的な睡眠障害やうつ症状までも引き起こしかねないのだ。
脳を疲れさせないためにはどうすればよいのか。その鍵を握るのが、セロトニンだ。脳内物質のひとつで、感情や睡眠など人間の大切な機能を健全な状態にする重要な役割を果たす。本書では、毎朝決まった時間に起きる、朝日を浴びる、朝食は必ず取ってしっかり噛むなど、セロトニンを脳全体に分泌させるセロトニン神経を活性化させる生活習慣を伝授している。
ほかにも、ストレスから脳を守るオキシトシン、快眠へと導くメラトニンなどの脳内物質についても解説。疲れを癒やしたいなら、まずは脳のケアから始めよう。
(三笠書房 1400円+税)