「若さは心臓から築く」天野篤著
2012年2月に、上皇陛下(当時の天皇陛下)の心臓手術の執刀医を務めた著者。本書は、弊紙で14年から連載している「心臓病はここまで治せる」が原典となっており、心臓のトラブルや治療法、心臓を守る生活習慣などを解説している。
健康診断で実年齢よりも動脈硬化が進んでいると指摘されても、自覚症状がないため放置してしまう人も少なくないだろう。しかし、狭心症や心筋梗塞の大きな原因になるため、しっかりと対策を取らなければならない。著者は、まず悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール値の管理が重要だと言う。
LDLが血液中で過剰になると、ストレスや喫煙、高血圧などで傷ついた動脈の内皮細胞に付着。活性酸素によって酸化LDLとなり、コブ状に盛り上がった粥腫が動脈内を狭くして動脈硬化を悪化させる。さらに、粥腫が崩れるとそれを防ごうと血小板が集まって血栓をつくり、血流をストップさせてしまう。LDLが高いということは、体内に“火種”があることと同じで、この火種が大動脈の中で悪さをすれば大動脈解離となり、冠動脈であれば急性心筋梗塞を起こすことになるのだ。
LDLがトラブルを起こすのは、後期高齢者(75歳以上)に差し掛かるタイミング。平均寿命が70代手前の時代や地域であればいいが、人生100年時代といわれる日本では、LDLが高い状態を放置してはいけないのだ。
本書では、見逃し厳禁の心臓病のサインも紹介。おならが臭い人、夜間のみ頻尿になる人、両腕で血圧を測り収縮期血圧(上の血圧)の左右差が10㎜/Hg以上ある人などは、心臓病を招きやすいと警告している。健康長寿を目指すなら、まずは心臓のケアだ。
(講談社ビーシー 1600円+税)