「内なるゲットー」サンティアゴ・H・アミゴレナ著 齋藤可津子訳

公開日: 更新日:

 主人公は、ポーランドの首都ワルシャワから、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに移住したユダヤ人のビセンテ・ローゼンベルグ。ポーランドの反ユダヤ主義に辟易して国を離れたビセンテは、アムステルダム、パリ、ボルドーと移動した末、船に乗ってアルゼンチンにたどり着く。

 そこで妻となるロシータと出会い、家具の販売店を開き6年で3人の子どもに恵まれた。安定した生活を確保したビセンテの気がかりは、祖国に残した母親のこと。いつか呼び寄せようとは思うものの、母親に対する疎ましさもあり、積極的に行動することができなかった。

 しかし、ドイツがポーランドに侵攻してユダヤ人への迫害が日増しに高まるにつれ、頻繁に来ていた母親からの手紙が途絶え始める。やがてユダヤ人大量殺戮の噂が耳に届くようになり、ビセンテは次第に沈黙の中に閉じこもるようになっていく……。

 第2次世界大戦中に起きたホロコーストの惨劇に、なすすべもないまま心を痛める主人公を描いた話題の書。小説といえども実在の人物がモデル。母親からの実際の手紙も掲載されており、史実の重さに圧倒される。

(河出書房新社 2000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動