「潜匠」矢田海里著
潜水士の吉田浩文は港湾土木の工事現場で潜水業務をしていた。海中の離岸堤の基礎が完成したら、それを水中撮影するのが主な仕事だったが、ある日、海に落ちた車を引きあげてほしいと依頼された。
現場に到着すると、警察や消防のほかにテレビカメラもいる。警察官が自殺を図ったらしい。潜ってみると、車内に年配の男が逆さになっているのが見えた。死体を乗せたままワイヤを付けて引きあげたが、それ以来、自殺者などの遺体の引きあげを依頼されるようになった。
そして2011年3月、宮城県名取市閖上の海水浴場の警備を任された吉田は、東日本大震災に遭遇する。
海で人命救助や遺体の引きあげに携わる潜水士のドキュメント。
(柏書房 1800円+税)