「新世紀『コロナ後』を生き抜く」佐藤優著
コロナ禍により、社会のありさまは大きく変化してしまった。グローバリゼーションには歯止めがかかり、ステイホームで経済が停滞し、一斉休校やリモート化で教育格差が拡大している。浮き彫りとなった国家間、地域間、ジェンダー間などのあらゆる格差拡大は、そう簡単に元には戻らないだろう。
これまでとは異なる社会となるコロナ後の世界で、私たちはどう生き抜くべきか。本書では、作家であり元外務省主任分析官の著者がそのヒントを提示。2020年5月にリモートで行われた新潮講座の書籍化であり、イギリスの歴史学者であるエリック・ホブズボームの「20世紀の歴史」や、コロナ禍で再注目されているアルベール・カミュの小説「ペスト」などをテキストに、過去の名著を読み解きながら現在の危機と未来を分析している。
著者は今後、宗教の時代になると述べている。外出や他人との接触を自粛するよう要請され続けた結果、人間の関心は必然的に内面に向かう。20世紀、戦後には人々がいや応なく体験させられた戦争というものを内面化していく中で宗教への一定の回帰が起きていた。新型コロナウイルスの蔓延に対しても、同じことが起きると予測できる。
一方で、コロナ禍に生まれた格差などの危機に対抗する動きも世界的に広まると本書。それが、ファシズムの台頭だという。ファシズムは、すべての人が満ち足りた世界では成り立たない。しかし、新型コロナウイルスの余波で社会が激動し、不満を持つ人が増え、これに対して犠牲者意識・被害者意識をあおるリーダーが現れれば、ファシズムの爆発が起こりかねないとしている。
コロナ後の世界を生き抜くには、歴史に学ぶ必要がありそうだ。
(新潮社 1500円+税)