「男が介護する」津止正敏著
家族を自宅で介護するのは、女性の役割という社会通念が長い間、日本人に刷り込まれてきた。しかし、今や主たる介護者の3人に1人は男性で、その数は100万人を超えるという。そうした変化は、社会に受け入れられつつあるが、介護者である夫や息子から被介護者への虐待や介護心中などの悲劇も増加。その背景には、日々の介護に、不慣れな家事全般が加わるとともに、それまで仕事中心だったゆえの孤立化がある。
さらに、仕事か介護かの二者択一を迫られた結果、介護離職によって経済的基盤と将来の希望が奪われていく。
本書は当事者たちの実態を豊富なエピソードとともに紹介しながら、大介護社会到来に備え、仕事と介護が両立できる社会の実現を提言する。
(中央公論新社 902円)