「或るギリシア棺の謎」柄刀一著
83歳の安堂朱海が死んでいるのが発見された。安堂家は本能寺の変の少し後に、船が座礁して日本に流れ着いたギリシア人の一族の末裔(まつえい)で、事務機器販売などを手がける財閥である。
遺体が納められたのは、かつて難破した船の材料で作られた棺だった。一族は何度もギリシアに帰ろうとしたが果たせなかったという。
遺書が見つかったことから自殺かと思われたが、その遺書はバラバラにちぎられていた。タイプライターで打たれたもので、「滾る憎悪」という言葉から始まり、「すみやかな二つめの死」という表現から、4年前に朱海の孫、夏摘が刺殺されたことが脳裏に蘇った。
呪われた一族の殺人事件の謎を解く。
(光文社 2200円)