「いないことにされる私たち」青木美希著
福島第1原発事故から10年経ち、取材していた記者の配置転換や退職で報道が減り、社会の関心が薄れていく。政府は放射能の汚染土を除染し、その土で作物を育てようとしている。
福島県郡山市から大阪市に避難した森松明希子さんは、避難者数一覧を見て驚いた。自分たち家族が入っていない! 総務省の「全国避難者情報システム」の登録者は大阪府内で約1200人だが、復興庁の「全国の避難者数」では大阪府の避難者が「88人」。住宅提供も打ち切られ、避難者は経済的に困窮している。「あるものがなかったこと」にされて支援が受けられなくなると、森松さんたちは危機感を持った。
原発避難者が統計から消される驚くべき現状のリポート。
(朝日新聞出版 1650円)