「お助け椀 人情料理わん屋」倉阪鬼一郎著
ある夜、嵐に襲われ江戸・通油町の料理屋わん屋も浸水。主の真造とおみね夫婦は徹夜で水をかき出し、被害を免れる。翌朝、真造夫婦は、甘藷粥などを作って被災者への炊き出しを始める。
炊き出し場所の稲荷神社では、御救い組を名乗る3人組の僧もおにぎりをふるまい、義援金を集めていた。翌日も店で被災者や彼らを援助する人たち用の「お助け膳」をふるまうと、例の御救い組が現れる。おみねは、精進料理しか口にしないはずの彼らがお助け膳を食べながら、刺し身や焼き魚の話をしているのを耳にして不審を抱く。同じく突如出現した御救い組に疑いの目を向ける「影御用」の梅津与力らも動きだす。
世の中が丸く収まるようにと丸い器で出される「わん屋」の料理を小道具に描く時代人情小説。
(実業之日本社 770円)