「沖縄戦の戦争遺品」豊里友行著

公開日: 更新日:

 76年前の6月23日、沖縄諸島に上陸した連合軍と日本軍との組織的戦闘が終わった。日本側の死者数は18万8136人、そのうち一般人は9万4000人に及ぶ。

 沖縄の洞窟や陣地壕、防空壕だった場所やジャングルには、相当数の犠牲者の遺骨が、いまだに家族の元に帰ることもできず眠っている。

 そうした遺骨をボランティアで探索・収集してきた人がいる。国吉勇さんだ。国吉さんは2016年に引退するまでの60年以上続く活動で、3800人もの犠牲者の遺骨を収集し、その一部が遺族に戻った。

 本書は、その活動の折に見つかり、遺族に返すことができなかった戦争遺品の一部を紹介する。

 真っ赤にさびた鉄兜や、火炎放射で石とともに焼けた飯盒、人骨がくっついたお椀、髪の毛がついた軍用食器、将校が自決した壕から出てきた拳銃、磁器製の手榴弾、破裂した水筒、日本軍の防毒マスクなど。多くの遺品が戦闘の激しさを物語る。

 一方で、おびただしい数の眼鏡や懐中時計、歯磨き粉のチューブ、歯の欠け落ちたくしなどの日用品、そして制服のものだろうか中央に「中」の字が浮かぶさびたボタンまであり、戦火に逃げ惑う庶民の姿がそれらの遺品から浮かび上がる。

 中には、米軍の兵士が身につける認識票や、爆雷を入れて壕の入り口を塞ぐために使われた米軍の爆雷鞄などもある。

 国吉さんは沖縄人だろうがアメリカ人だろうが、そして民間人や軍人も人種や職種を問わず遺骨を収集してきたという。

 遺骨とともに集まり、遺族に戻らぬ遺品は10万点を超えるそうだ。

 一つ一つがその持ち主が生きて存在していた証しである。平和を享受する我々は、何も語らぬ遺品の声に耳を傾け続けなければならない。

(新日本出版社 2640円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    三浦大知に続き「いきものがかり」もチケット売れないと"告白"…有名アーティストでも厳しい現状

  2. 2

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  3. 3

    サザン桑田佳祐の食道がん闘病秘話と今も語り継がれる「いとしのユウコ」伝説

  4. 4

    松嶋菜々子の“黒歴史”が石橋貴明セクハラ発覚で発掘される不憫…「完全にもらい事故」の二次被害

  5. 5

    NiziU再始動の最大戦略は「ビジュ変」…大幅バージョンアップの“逆輸入”和製K-POPで韓国ブレークなるか?

  1. 6

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  2. 7

    下半身醜聞の川﨑春花に新展開! 突然の復帰発表に《メジャー予選会出場への打算》と痛烈パンチ

  3. 8

    モー娘。「裏アカ」内紛劇でアイドルビジネスの限界露呈か…デジタルネイティブ世代を管理する難しさ

  4. 9

    伸び悩む巨人若手の尻に火をつける“劇薬”の効能…秋広優人は「停滞」、浅野翔吾は「元気なし」

  5. 10

    小松菜奈&見上愛「区別がつかない説」についに終止符!2人の違いは鼻ピアスだった