「古くて素敵なクラシック・レコードたち」村上春樹著
毎年、ノーベル賞候補に名を連ねる著者が、若き日にジャズ喫茶を経営していたエピソードはあまりにも有名。趣味で集めたレコードは、これまで約1万5000枚に及ぶという。実はジャズほどではないがクラシック音楽も昔から好きで、レコードコレクションの2割はクラシックだそうだ。
クラシックのレコードを買うときは、ジャズのそれとは異なり、行き当たりばったりで買い込むケースが多いという。
希少盤や名盤などには興味はなく、「ダメもと」で面白そうなものを適当な価格で買ってきて、気に入らなければ処分、気に入ったものは残すというやり方でコレクションは形成されてきた。
その購入の際にこだわるのはジャケットデザインだという。ジャケットの魅力的なレコードは「中身も素敵であることがなぜか多い」からだ。
このようにして「結果的に集まってしまった」コレクションから、お気に入りをそのジャケットと共に紹介する私的クラシックレコードガイド。
まず取り上げられるのは、ストラビンスキーの「ペトルーシュカ」を録音した5枚。ストラビンスキーの大の親友だったエルネスト・アンセルメは、スイス・ロマンド管弦楽団を指揮してモノラル(1949年)とステレオ(1958年)で2度吹き込んでいる。
「ジャケ買い」したこの2枚の他に、ジャケットはB級恐怖映画のサウンドトラック盤みたいでいただけないが、期待しないで買ったけど結果は「当たり」だったというエーリッヒ・ラインスドルフ指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団演奏の盤など、5枚を聴き比べて評価。
こんな感じで100のテーマで486枚のレコードを取り上げ紹介する、ハルキファン必携本。
(文藝春秋 2530円)