「文豪の凄い語彙力」山口謠司著
「億劫」と「大儀」は、どちらも「面倒さ」を表す言葉だが、それぞれ違うニュアンスが隠されている。本来は仏教用語で、「はるかに長い時間」を意味する「億劫」は「時間がかかる」に、一方の「大儀」は大きな儀式を意味することから、「たくさんの物事の調整」に、そのどちらに主軸があるかによって使い分けられるという。このように一つ一つを吟味して使用する文豪の語彙は、言葉で読者を説得する力を持っている。そんな文豪たちの使う言葉を取り上げ、読み解く文学エッセー。
芥川龍之介の「或日の大石内蔵助」に出てくる「的皪(てきれき)」=「白く鮮明なさま、光り輝くさま」、吉川英治が「三国志」で用いた「秀雅(しゅうが)」=「秀でて雅であること」など、63作家の語彙に日本語の豊かさを学ぶ。
(新潮社 605円)