「ゼロコロナという病」藤井聡・木村盛世著/産経セレクト
新型コロナウイルスの陽性者については、東京で1日5000人を超えるなど猛威を振るっていると報道されるが、振り返ると昨年4月の第1回緊急事態宣言の際の東京の陽性者数は約50人だった。
その100倍なわけで、もはや緊急事態宣言どころではなくハイパーメガトン緊急事態懲罰宣言ぐらい出した方がいいレベルである。
「コロナ禍」という言葉があるが、私自身は「コロナ騒動」であり、「メディア禍」だと感じている。本書は、こうした考えを持つ少数派の人間に対し留飲を下げる内容になっている。タイトルの「ゼロコロナという病」について、藤井氏はまえがきで意図を述べている。これが本書のすべてを言い表しており、その後の展開は元内閣官房参与の藤井氏と、医師で元厚労省医系技官の木村氏が、その根拠を対談形式で展開していく。
まずは、藤井氏の「ゼロコロナという病」の意図を紹介する。とにかく日本は「自粛」こそがコロナ対策に効果があると考えられ、その思想を徹底した。こうした前提を受けてこう述べる。
〈我が国はコロナ対策について「だけ」は過剰とも言える程の注意が向けられ、様々な対策が続けられている一方、「自粛」をはじめとしたコロナ対策のために広がった失業や倒産、鬱病、そして数千人とも言える自殺者の増加に対する対策には、さして大きな注意が向けられず、「コロナ禍」による社会的、経済的被害は拡大の一途を辿ったのでした〉
現在、テレビに連日のように登場する「専門家」や政府分科会の人々は、呆れ果てた様子で国民に自粛と我慢を強いている。それに対して疑問を呈すると「素人が何を言っているのだ! 尾身会長は1万円札に描かれるほどの実績を持った人物だ!」などと言われてしまう。
となれば、素人は「グヌヌヌヌヌ」と言うしかなくなるが、医療の専門家である木村氏はこう述べる。
〈考えてみたら、新型コロナウイルスは一昨年12月までなかったわけですから、「新型コロナ専門家」はいないはずです。存在しなかったものの専門家なんているわけないじゃないですか〉
陽性者数は全国で激増しているが、死者についてはここしばらく1ケタ~10人台で推移している。これまででもっとも多かったのは今年の5月18日の229人。延々と陽性者数を重要指標にしているからコロナ騒動は終わらない。「いい加減にしてくれ」と思う人は「仲間がいた」と思える本である。 ★★★(選者・中川淳一郎)