「フィッシュボーン」生馬直樹著
暴力団組長の父を持つ陸人。虐待を受け、児童養護施設で育った航。愛人殺しの罪で父が服役中の匡海。学校の中で浮いているこの3人が出会うのが、物語の始まりだ。
彼らは成長して、チーム・ランズを結成する。いろいろな悪事に手を出すが、アクシデントが発生して早急に大金を得る必要が生じ、起死回生の誘拐計画を考えるのが次の展開。第1章は、その誘拐計画の思わぬ着地を描いて幕を閉じる。ここで57ページ。全体が252ページの小説なので、まだ始まったばかり。
このあとどうなるか。第2章について少しだけ触れておくと、施設で生き別れの妹と再会した航の回想、身元不明の焼死体を調べる刑事柳内と、その娘結衣子を襲った悲劇など――誘拐計画のその後の後始末を中心に、その前とその後を描いていくのだ。人物造形が秀逸なので、つい読まされてしまうが、謎が謎を呼んで、いったい真実は何なんだというところで、第2章の幕は閉じる。分量的にはこの第2章がいちばん長く、たっぷりと読みごたえがあるが、肝心のところは明らかになっていない。
最後の第3章は50ページと短く、ここですべてが明らかになるので、ここはいくらなんでも紹介できない。前作「雪と心臓」も構成に凝った小説だったが、今回も水面下に隠された真実が明らかになる第3章が圧巻。異色のミステリーだが、なによりも読後感がいい。切なく悲しい青春小説でもあるのだ。 (集英社 1870円)