「限界風俗嬢」小野一光著

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 SDGsのゴール5に示されている「ジェンダー平等を実現しよう」。

 この目標を達成するため、平等以前に「人身売買や性的、その他の種類の搾取など女性及び女児に対するあらゆる形態の暴力を排除する」という目標もある。それは、日本にとっても大きな課題だ。

 本書では、20年以上にわたる取材で風俗業界に身を置く女性の本音に耳を傾けてきた著者が、心と体の限界を超えて働く彼女たちの切実な現実をつづっている。日本の風俗で働く多くの女性は人身売買などとは無関係で、自分の意思でその職業を選んでいるかもしれない。しかし、本書に登場する女性たちが、風俗に行き着くまでの背景は壮絶だ。

 SMクラブで働いていた現役女子大生のアヤメさんは、小学6年の頃に中学1年の男子からイジメを受け、集団レイプの被害に遭っていたと話す。さらに彼女が中学生になると、事もあろうに売春を強要され、金を巻き上げられ、目標金額が達成できない場合は暴行を受けていたというのだ。

 実は相手の男子は、地域のスポーツチームにも所属する優等生で、時にはレイプにチームの上級生なども参加していたという。そして売春の過去をばらすと脅され、その関係はアヤメさんが高校2年生まで続いたそうだ。

 そのような体験を経てまで、なぜ風俗で働いているのか。アヤメさんは、どこかで異性の優しさや性行為を求めていると自身を分析している。同時に、売春をさせられていた頃と比べて、風俗店で働くことは安全で安心と語るのだ。

 他にも、義父から性的虐待を受けていた女性や妊婦の風俗嬢などの、赤裸々な言葉が積み上げられたノンフィクション。これが日本社会の現実なのだ。

(集英社 1540円)

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