「2030 未来への分岐点Ⅰ」NHKスペシャル取材班編著
今年放送されたNHKスペシャルの書籍化。私たちが直面する地球の危機の現状を解説しながら、各分野の専門家が2030年を分岐点とした“その先にある未来”について語っている。
異常気象や食料危機、資源の大量消費にプラスチック汚染など、世界規模の諸問題において重大な分岐点となるのが、2030年だといわれている。例えば、地球温暖化。2015年に採択されたパリ協定では世界の平均気温上昇を1・5度に抑える努力を追求することが示されたが、いまだ温暖化は止まらず、このままいけば2030年には+1・5度に到達すると予測されている。
さらに、+2度に近づいてしまうと、地球のシステムが臨界点を突破。その後はたとえ温室効果ガスをゼロにしても、温暖化が止まらなくなる可能性があるという。
さらに、地球の平均気温は最終的に+4度になる可能性すら出てきている。全国140カ所で堤防を決壊させた令和元年の台風19号をモデルにした研究によると、+4度という条件下では台風19号に含まれる水蒸気は20%増加し、全体の降水量も30%以上増加するという。こうなると首都圏でも荒川が決壊してあらゆる機能が壊滅状態となり、死者は2300人に達すると想定されている。
スウェーデンの環境学者ヨハン・ロックストローム氏は、+4度の被害を受けるのは地球ではなく、人間だと警告する。海面上昇でニューヨークや東京は沈み、世界の人口の3分の1が平均気温29度を超える地域に住むことを余儀なくされるが、これは生理学的に人類の生存が難しい環境であるという。
最悪の危機を回避するために行動を選択する猶予は、もう10年を切っているのだ。
(NHK出版 1540円)