「東京の城めぐり」辻明人著 小和田哲男監修
東京の城といえば、誰もがすぐに江戸城を思い浮かべるだろう。かつての江戸城は、現在の千代田区全域と中央区の大半、そして港区の一部を含む世界でもまれな大城郭だったゆえに、その存在感は半端ない。
しかし、じつは東京には、江戸城だけでなく、23区内に約100、多摩地区を含む都全体では約200の城跡があるという。本書は、東京のあちらこちらに残る城跡を紹介するガイドブック。
まずは江戸城の遺構や現存建造物などの見どころや、江戸城を最初に築いた太田道灌の事績を紹介。その上で、いよいよ都内の城めぐりへ。
JR赤羽駅近くの住宅街の丘の上、現在は静勝寺というお寺の境内は、かつての「稲付城」の主郭(本丸)だったという。
稲付城も道灌ゆかりの城で、もともと豊島氏の砦だったものを築き直し、東の岩付(岩槻)街道を押さえ、江戸城と「岩付城」方面を結ぶ「繋ぎの城」にしたそうだ。境内には城跡を示す碑や、発掘調査で出土した稲付城時代の石などがある。
昨年、閉園した遊園地「としまえん」も、豊島氏が本拠・石神井城の支城として築いた「練馬城」の跡だという。
その他、渋谷駅東口近く、現在は「金王八幡宮」の場所に平安時代末期に築かれた「渋谷城」や、鎌倉時代にこの地の武士・池上宗仲の館だった都内の名刹・池上本門寺など。23区内の城跡の多くが現在は寺院や神社となっている。
一方で関東屈指の名城と評される「滝山城」や、秀吉の小田原攻めの際に激戦の末に落城した「八王子城」など、多摩地区には、往時の面影を今に伝える城跡も多い。
都内、さらに関東各県でお勧めの名城まで、120余のスポットを紹介。
街歩きの新たなテーマに城跡巡りもいいのでは。
(G.B. 1848円)