「地球温暖化」田中優著
20年以上にわたり地球温暖化の危機を説いてきた著者が、その原因と対策を分かりやすく解説する。
地球温暖化による熱波のレベルは年々上がり、2020年夏にはロサンゼルスで49.4度を記録。豪雨被害も頻発し、中国の長江流域では7047万人が被災、バングラデシュではモンスーンの影響で国土の3分の1が浸水した。映画やドラマで見てきた風景が、現実のものとなりつつあるのだ。
地球温暖化を起こしている大きな原因は温室効果ガスだが、国内でもっとも発生させているのが発電所である。政府は“みんなのライフスタイルが原因”とごまかしているが、全国78の発電所だけで日本の二酸化炭素排出量の3分の1を占め、その半分が石炭火力発電所であると著者は指摘している。
とはいえ、電気を使わないわけにはいかないし、国民は黙って地球温暖化が加速していくのを見ている他はないのだろうか。実はこれが大いなる勘違い。中央集権型の送電網では、大型発電所でつくられた50万ボルトの電気がいくつもの変電所や電信柱を通り、100ボルトで使う各家庭まで届けられている。
そこには大規模な送電ロスが発生しているだけでなく、現在の送電の仕組みは高圧のまま電気を使う産業に、ほんの少しだけ電気を使う家庭を無理やりつなげた、非効率な仕組みとなっていると本書。契約件数で比べると、高圧需要家が2%で、残りの98%が低圧需要家の一般家庭であるにもかかわらずだ。
現在のような、大型発電所でつくられた電気を使う送電網の仕組みから自由になり、電気を地産地消するだけでも、温暖化対策の大きな力になるという。地球温暖化問題の根っこから学び直すべきだ。
(扶桑社 935円)