「原発広告」本間龍著/亜紀書房
プーチンが原発をも攻撃している現在、改めて原発推進の旗を振った人たちを挙げ、その責任を問いたい。
私は2011年6月に「原発文化人50人斬り」(毎日新聞社、のちに光文社知恵の森文庫)を出したが、そこでは、たとえば養老孟司らを激しい糾弾の対象としていなかった。「バカの壁」の養老は、「原発の壁」を越えてはいない。それどころか、推進して報酬を得ている。彼は己について「カネの壁」をこそ書くべきだろう。
「原発広告」によれば、2001年3月25日付の「読売新聞」で養老が当時の東京電力社長、南直哉と対談している。提供が東京電力。また、同年3月31日付の「朝日新聞」で竹中平蔵がシンポジウムに出ている。こちらの提供は電気事業連合会。
その他、“原発文化人”もしくは“原発タレント”として挙げられているのが、茂木健一郎、住田裕子、増田明美、北村晴男、浅草キッド、勝間和代、星野仙一、倉本聰ら。
少なくとも、これらの人たちはその広告に出ていくらもらったのかを明らかにしなければならない。私は前掲書で、たけしや弘兼憲史、それに大前研一らの責任を追及した。
「原発広告」には、3.11の後の2013年7月22日の読売テレビ系の「情報ライブ ミヤネ屋」に出演した参議院議員(当時)の山本太郎が脱原発を語ろうとした途端にCMに切り替わったという“事件”の話が出ている。これにはさすがに「視聴者やネットユーザーなどから抗議が殺到し、ついには番組スポンサーがテレビ局に対して、公平な番組作りを行うよう申し入れをするといった事態」になったという。
また、本間は「広告批評」1987年6月号の特集を取り上げ、高木仁三郎の「原発広告の『正しい』読み方」などに触れながら、同誌編集長の天野祐吉に尋ねている。
まず、なぜ原発広告特集をやろうとしたのかだが、天野は「広告というものが、こういう風に使われていいのだろうか」と思ったと答えている。原発広告の大半は意見広告だが、それに対する反論は掲載されない。それで、「一方的に金持ちの意見だけが広告できる」ことになるわけで、それを天野はおかしいと考えて特集を企画した。
電力会社のすさまじいのは東電が3.11直後にテレビ、ラジオ、新聞に「お詫び」の広告を出したことで、これは強い非難を受けて中止に追い込まれた。それほど鈍感で傲慢なのである。 ★★★(選者・佐高信)