「難民鎖国ニッポン」志葉玲著

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 日本における最悪の人権侵害のひとつが、法務省の外局である出入国在留管理庁(入管)による外国人に対する非人道的行為ではないだろうか。本書では、入管の収容施設で死亡したスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんの事件を軸に、多文化共生社会とは逆行する日本の入管の問題について解説している。「日本の子供たちに英語を教えたい」という夢を抱いて留学生として来日したウィシュマさん。しかし、交際相手から暴力を受けるようになり、日本語学校を欠席しがちになったことで学籍を失い、在留資格も失ってしまった。もちろん、DV被害を警察に相談していた。しかし、在留資格だけに着目され、名古屋入管の施設に収容されてしまったのだ。

 DV被害について適切に対応がなされていれば、DV措置要領の規定に基づいて在留資格が交付され、収容などされずに済んだかもしれない。しかし、名古屋入管の職員らはそもそもDV措置要領を知らず、同要領に沿った対応を行わなかったと本書。ウィシュマさんの事件は日本の入管の人道上の問題を浮き彫りにしたが、実は1997年以降、20人以上の人々が入管施設内で医療の不備や自殺などで命を落としているという。

 偽装滞在や不法入国などによるトラブルメーカーを収容することは当然のことだろう。しかし、日本の入管では、難民申請中といった個別の事情も考慮せず、逃亡のあるなしにも関係なく、刑事手続きであれば必要とされる裁判所の令状もなしに一律の収容が行われている。本書では、「治安維持」を口実に偏見をあおる法務省と入管の闇とともに、シリア難民ですら難民認定されない日本の難民問題の実態も明らかにしている。

(かもがわ出版 1760円)

【連載】ポストコロナの道標 SDGs本

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