「47都道府県 日本全国地元食図鑑」菅原佳己著
「地元食」とは、その土地に暮らす人たちが毎日食べている「地域のスーパーで買える日常食」のこと。スーパーマーケット研究家の著者が、全国各地のスーパーを訪ね、見つけた「とても独り占めにはしておけない」級の地元食を教えてくれる面白グルメガイドだ。
そもそも著者がスーパーマーケット研究家を名乗るようになったきっかけが関西のスーパーで定番の「せみ餃子」との出合いだったという。人気のチルド餃子が、なぜ「せみ」なのか。パッケージにも「蝉」のイラストが描かれており、まだネット検索もなかった時代、不思議に思った著者が京都のメーカーに直接電話して尋ねると、「夏になるとセミがミンミン鳴きますやろ? うちぃ、珉珉食品やさかい……」との答え。その意外な真実に「私だけが知ってるなんて、もったいない!」とご当地スーパーの本を書いたのが始まりだという。
北海道のスーパーで売られている細長い長方形の練り物「マフラー」をはじめ、山形県内で夏だけ販売されるナスの漬物「ぺそら漬け」、山梨県富士吉田市の郷土料理の麺をロール状にして、食べたい分だけ好みの太さに切り分けられるようにした「吉田のうどん 麺ロール」、島根県のバラの形をした「バラパン」、そして沖縄県石垣島のスーパーが発祥の「オニササ」(ポリ袋に「おに」ぎりと「ささ」みフライを入れ、袋ごと握って合体させた軽食)など131の地元食を紹介。
東海エリアで売られる名古屋の「SUGAKIYAラーメン」は、客たちが席に荷物を置いたまま近隣のラーメン店に食べに行くのに悩んだ甘味処が、独自の味を追求して作った「和風とんこつスープ」のラーメンを店で出したのが始まりという。そんな「せみ餃子」に負けずとも劣らずの面白エピソードも満載。
旅先で名物や銘菓を味わうのも楽しいが、ぜひともスーパーにも足を運び、地元食を見つけよう。
(平凡社 1980円)