「これってヤラセじゃないですか?」望月拓海著
元ヤン大城了は20歳、元気いっぱいの熱血漢だ。友人の乙木花史18歳は、超あがり症で初対面の人とは会話ができないものの、企画作りの天才で、この2人がコンビを組んで「日本一稼ぐ放送作家」を目指す青春お仕事小説である。
前作の「これでは数字が取れません」は、伝説の放送作家に弟子入りして、下積みの苦労を味わう入門編だったが、シリーズ第2作の本書は、独立した彼らに音楽番組から声がかかるところから始まっていく。前作を未読でも全然大丈夫なので、安心して手に取られたい。これが面白ければ前作に遡ればいいのだ。
連作長編ふうの構成で、5つの中編が数珠つながりのように絡み合っていくが、第2話「歌姫はつらいよ」が強い印象を残す。天才歌姫の密着VTRをつくることになるものの、この歌姫がわがままで、了と花史は振りまわされる。そこをどう打開していくかという中編だが、感動的なラストまで一気読みの素晴らしさだ。
読後感がいいのにはもうひとつ理由があることも書いておきたい。前作もそうだったが、敵役を追いつめないのだ。意地悪されても、卑怯なことをされても、了と花史の最強コンビは負けないように頑張るものの、けっして相手を完膚なきまでにはやっつけない。必ず相手の逃げ場をつくってあげるのである。だから、後味がいい。放送業界の裏側を描く痛快小説だ。 (講談社 880円)