「ロシアよ、我が名を記憶せよ」八木荘司著
日清戦争の勝利から5年、ロシアによる軍事的圧力が徐々に強まる中、海軍大尉の廣瀬はペテルブルグの日本公使館に武官として駐在中。陸軍武官の田中は、情報収集に余念がないが、廣瀬は相手の善意に付け入ってまで諜報活動をするべきではないと考えている。
そんなある日、ロシア海軍省の園遊会に参加した廣瀬は、日本びいきの海軍中佐・コヴァリスキーに自宅へ招待される。部下とともにコヴァ家を訪ねた日、廣瀬は彼の娘・アリアヅナと恋におちる。毎週のように逢瀬を重ね、将来を約束した2人だが、日ロ関係は日に日に悪化。明治34年、少佐に昇進した廣瀬に、ついに帰朝命令が下る。
日本初の「軍神」廣瀬中佐の知られざる悲恋を描いた歴史小説。
(新潮社 649円)