「老記者の伝言」むのたけじ著
著者は、戦後70年(刊行当時)を振り返り、ヨーロッパ社会に許され、受け入れられたドイツに比べ、日本は近隣諸国との間に軋轢(あつれき)を続けていることが情けないと嘆く。そうなったのは、敗戦時に満州事変以来の15年戦争の責任の所在、戦場での犯罪行為に対する裁き、そして迷惑をかけた諸国民へのわびをキチンとやるべきだったのにできなかったからだと指摘。できなかったのは、まっすぐに歴史に学ぶ能力をうしなっていたからだと。
ほかにも、当時の安倍内閣が強行した安保法制や、従軍慰安婦問題、特定秘密保護法などへの批判から、戦争や憲法、そして震災まで。終生反戦を訴え続けてきた氏が、若者たちへ語りかけるように説く。2016年に101歳で亡くなった反骨のジャーナリストの聞き書き集。
(朝日新聞出版 880円)