終活よりも<未知との遭遇>!老後の楽しみ方本特集
「80代で見つけた生きる幸せ」G3sewing著
平均寿命も過ぎて、そろそろ身辺整理を始めようと思ったときに、突然、やる気を刺激するものに出合ってしまう人もいる。ツイッター、ソーイングなど新たな出合いで人生が変わった人たちのエッセーを紹介。
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著者の父、G3(じーさん)は、現役時代は電気工事士としてテレビやラジオの修理の仕事をしていた。短気で人づきあいが苦手なので仕事が続かず、貧乏暮らし。さらに病気で手術や入院を繰り返してうつになり、自殺未遂をしたこともあった。
月3万円の年金暮らしで家族ともうまくいっていなかったのだが、82歳のとき、娘である著者がミシンの修理を頼んだ。すると、あっという間に修理してしまった。ミシンの使い方を教えると、瞬く間に布を縫い上げるミシンに感心し、「何か縫いたいなあ」と言う。以前、著者が作った聖書カバーを見せると、分解して仕組みをチェックし、18枚も作ってしまった。
G3は高校の電気科出身で電気製図が得意だったので、近鉄に入社したかったが祖父に反対され、実家のラジオ店を継いだ。だが、やりたいことを諦めたという後悔が残った。ミシンに出合って元気を取り戻したが材料費がかかる。そこで、使わなくなったネクタイをパッチワークのように接ぎ合わせてトートバッグを作製。商品は次第にレベルアップし、著者の娘が仕事先にもっていったら好評で、注文がくるようになった。
さらにアメリカ留学している息子がG3のがま口バッグをSNSで紹介してくれることになった。アカウント名は「G3sewing」。G3の「あと20年若かったらもっと色々できたなぁ」という言葉とともにアップすると、注文が殺到してパニックに。
82歳でモノ作りの楽しさに目覚めたG3のイキイキとした日々を豊富な写真と共に紹介する。
(KADOKAWA 1540円)
「71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活」紫苑著
紫苑はフリーランスで不安定な仕事をしながら、母子家庭で2人の子どもを育てあげた。家賃を払うのが負担になってきたので、64歳のとき、貯金をはたいて築40年の中古住宅を購入。自由業だったので年金は月5万円! 人生で初めてお金に向き合う生活が始まった。
そこで3食ちゃんと食べて食費は月1万円と決める。ポイント2倍デーなどに1カ月分まとめ買い、を何カ月か繰り返すと、ポイントだけで1カ月分の食品が買えるようになる。ガス、水道、電気の光熱費が1万円、健康保険などが1万円。小さな節約をするより大きな出費を抑えることで、お金の不安もなくなり、体も健康になった。
サバ缶で炊き込みごはんを作るなど、簡単なレシピも載った実践的な一冊。
(大和書房 1540円)
「87歳、古い団地で愉しむひとりの暮らし」多良美智子著
美智子が今の団地に移ってきたのは55年前。家は買わない主義で、住まいはずっと賃貸住宅だった。7年前、夫が亡くなり、ひとり暮らしになったが、この団地の部屋で安らかな最期を迎えたいと思っている。
地元のNPOが運営している高齢者のコミュニティーは1日1000円で参加でき、昼食つき。絵手紙や写経の会に参加しているが、同世代の「老人仲間」はとても心強い。あるとき、YouTubeを見ていて「自分でもやったら面白そう」と思った。中学生の孫と一緒に、絵手紙や水彩画などの作品をアップしたら、今や登録者は6万人以上! 絵手紙で作ったカレンダーのプレゼントには100人以上の応募があった。
「楽しまないと損」と考える87歳が、YouTubeで世界を広げた体験談。
(すばる舎 1430円)
「89歳、ひとり暮らし。」大崎博子著
シングルマザーとして娘を育ててきた博子は、ロンドン在住の娘から「パソコンを使えば日本とロンドンでも無料で通話できる」と聞いて、78歳でパソコンを始めた。ツイッターをすすめられたが、何をつぶやけばいいのか分からない。
そのとき東日本大震災が発生。電話はつながらなかったがツイッターは通じた。「こんなに役に立つのなら」と俄然、やる気に。
原発への不安や苛立ちをツイートしたら、ライブドアニュースで取り上げられ、一気にフォロワーが増えた。ネットフリックスで韓国ドラマを見ているときがいちばん幸せ。だが、毎年8月15日近くになると、戦争体験を伝えている。
フォロワー13.8万人超、89歳の充実した日々をつづる。
(宝島社 1430円)