「非戦の安全保障論」柳澤協二、伊勢﨑賢治、加藤朗、林吉永著 自衛隊を活かす会編
ロシアによるウクライナ侵攻を機に、国内でも中国を念頭に「防衛力の抜本的強化」とか「敵基地攻撃」や「核共有」などの勇ましい議論が持ち上がっている。しかし、歴代内閣の安全保障・危機管理関係の実務を担当してきた著者のひとり、柳澤氏は国土が狭く、人口は減少、エネルギーと食料も自給できず、政治は内向き、そして現状維持を欲する国民性の日本は戦争には向いていないと断言する。そんな国が防衛予算を増やして敵地に届くミサイルを持つことで強くなったと錯覚に陥ったら、それは愚かで危ういことだと忠告する。
本書は、安全保障に精通した各界の専門家がウクライナ戦争があらわにした国際秩序の問題点と日本の安全保障について論じ合う。
(集英社 990円)