「とりどりみどり」西條奈加著
「とりどりみどり」西條奈加著
1万両以上の資産を持ち、万両店(まんりょうだな)と呼ばれる廻船問屋、「飛鷹屋(ひだかや)」。その飛鷹屋の末っ子、11歳の鷺之介は、かしましい3人の姉に振り回されている。
ある日、ひとりで母親の墓参りに行ったら、その前に旦那風の男が墓参りに来たという。供えられたまんじゅうの下に女物の紙入れがあり、中に金蒔絵の櫛が入っていた。亡母が3人の姉の嫁入り道具にと作らせた櫛にそっくりだ。同じ職人が作ったものらしい。その櫛には白鷺とナナカマドが描かれていた。
鷺之介を捜しにきた女中頭のお滝は、墓参りにきた旦那風の男のことを聞くと顔をこわばらせた。(表題作)
廻船問屋の末っ子をめぐる、心温まる時代小説7編。 (祥伝社 1760円)