「確証」今野敏著
「確証」今野敏著
先頃、銀座の高級時計店に覆面姿の男3人が強盗に押し入った事件があった。映像を見ると、バールでショーケースを叩き割るというなんとも乱暴なやり口だ。プロの窃盗犯が見たら、あまりの拙劣さに眉をひそめているに違いない。警察小説ではあまり取り上げられることのない盗犯係の警視庁捜査3課を舞台にした本書では、強盗犯対プロの窃盗犯という構図が物語の軸になっている。
【あらすじ】警視庁捜査3課の萩尾秀一は盗犯係一筋のベテラン警部補。相方の新人女性刑事・武田秋穂から、白昼の渋谷で起きた高級時計店の強盗事件の現場を見に行っていいかと問われた萩尾は、強盗は1課の仕事で3課は関係ないと、にべもない返事をする。1課に憧れている秋穂は残念がるが、12時間後の翌日、同じ渋谷の宝飾店で窃盗事件が起きた。
秋穂と現場に駆けつけた萩尾は、ほかのものには手をつけず奥の金庫にあった5000万円のネックレスだけ盗んだ手並みを見て、プロの仕業と見抜く。しかも、これは前日の乱暴なやり口が気に食わないという強盗犯へのメッセージではないかと推察する。
1課の連中はそんな萩尾の見方を相手にしなかったが翌日、赤坂の宝石店で強盗殺人事件が再び起こったことで1課長は、萩尾の推理も一理あるかもしれないと秋穂と共に捜査本部に参加するように要請する。萩尾は渋谷の宝飾店の金庫が指紋認証式であることからある腕利き窃盗犯に接触し、そこから犯人をたどっていく--。
【読みどころ】本書では捜査3課という一見地味な部署のプロフェッショナルな仕事ぶりが紹介されているが、エリート集団・捜査1課と3課の熾烈な戦いぶりも読みどころ。萩尾警部補シリーズ(既刊3冊)の第1弾。 〈石〉
(双葉社 744円)