「SRO Ⅰ 警視庁広域捜査 専任特別調査室」富樫倫太郎著
「SRO Ⅰ 警視庁広域捜査 専任特別調査室」富樫倫太郎著
日本の警察活動は、各都道府県単位で行われており、広域の犯罪が起こった場合は、対象の都道府県警の合議により、合同捜査または共同捜査が行われるが、米国のFBIのように複数の都道府県を担当する犯罪対策組織はない。本書は、架空のFBI的な新組織を舞台にしたもの。
【あらすじ】警視庁では、近年増加してきた凶悪犯罪のために、凶悪犯の行動分析や捜査方法に関してのノウハウを学ぶためにFBIに留学生1人を派遣することにした。500人の応募者の中から選ばれたのが山根新九郎。山根はFBIでプロファイリングを学び、実際の捜査にも参加した。
帰国後、管轄に縛られずに広域捜査を行う組織の設立を提言。総理の肝いりでできたのが広域捜査専任特別調査室、通称SRO。室長は山根警視長、副室長は芝原麗子警視正、そのほか尾形警視正、針谷警視、川久保警部ら総勢7人、うち5人がキャリアという特異な部署だが、室長はじめ、いずれも訳ありの連中ばかり。
山梨県で発見された女性の遺体からは治療痕のある歯と手の指が失われており、これは身元照会ができないようにしたためではないか。類似の事件がないかとスーパーコンピューターで検索をかけると、この10年近くの間に関東圏内で5件の同様の身元不明死体があることが判明。もしや同じ連続猟奇犯の手によるものではないか。
調査室ではそのシリアルキラーを「ドクター」と名付け、独自の調査を開始する。そんなのは妄想に過ぎないと周囲は冷ややかだったが、山根らはあらゆる手段を駆使して「ドクター」の正体に迫る──。
【読みどころ】個性的な面々が縄張り意識で硬直した警察組織に鋭いくさびを打ち込む痛快さが身上のユニークな警察小説シリーズの第1弾。 〈石〉
(中央公論新社 880円)